Webエンジニアからカタリバへ。人に寄り添うシステムをつくりたい/NEWFACE
Interview
岩本 康佑 Kosuke Iwamoto 経営管理本部 システムチーム
東京都出身、大学では経営と経済を学ぶ。大学在学中にWebエンジニアとして働き始め、約5年半にわたりWebサービスやシステムの開発に従事。人の考えや行動、それを取り巻く環境の変化への関心から、2025年5月にカタリバへ入職。経営管理本部システムチームにて、ワークフローシステムや各種クラウドサービスの運用・改善と、生成AIの社内活用推進を担当している。
ここ10年で、仕事のあり方・捉え方は、まったく違ったものになってきている。終身雇用は崩壊、転職は当たり前のものとなり、複業やフリーランスも一般化。テクノロジーの発達によって無くなる仕事予想も大きな話題となった。給料や肩書よりもやりがいや意味を重視する若者も増え、都会から地方にUIターンすることも珍しくなくなった。世界が一斉に経験したコロナ禍をへて、今後ますます働き方は多様に変化していくだろう。
そんな中カタリバには、元教員・ビジネスセクターからの転職・元公務員・元デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持った人材が就職してきており、最近は複業としてカタリバを選ぶ人材もいる。その多くは20代・30代。彼らはなぜ、人生の大きな決断で、いまNPOを、いまカタリバを選んだのか?
連載「New Face」では、カタリバで働くことを選んだスタッフから、その選択の背景を探る。
IT企業やスタートアップでWebエンジニアとして経験を積んできた岩本康佑(いわもと・こうすけ)。現在はカタリバの経営管理本部システムチームで、インフラの運用や生成AIの活用推進などを担当している。
未経験から独学でプログラミングを学び、業務委託としての活動しながらやりがいを探してカタリバにたどり着いた彼が、今、エンジニアとして何を大切にして働いているのか。その歩みを聞いた。
コロナ禍の独学から始まった
エンジニアへの道
——大学時代にプログラミングを始めたのが、エンジニアとしてのスタートだったそうですね。
大学2年のときにコロナ禍になって、それまでしていた飲食店のアルバイトのシフトがどんどん減ってしまったんです。家にいる時間が増えて、「このままだと収入もないし、やりたいこともできないな」と思いました。
友人と会う機会もなくなって、家でYouTubeを見ているときに、たまたま目に止まったのがプログラミングの広告でした。もともと自分で考えて何かを作ることが好きだったので、「プログラミングなら自分のアイデアを形にできるかもしれない」と思い、独学で学び始めたんです。
といっても、それまでパソコンを触ったことがほとんどなく、タイピングも人差し指で打つような状態でしたが(笑)
——独学から、実際の開発現場にはどのように入っていったのですか?
最初の3ヶ月くらいは1人で学習していたのですが、「これ以上は1人でやっていても伸びないな」と感じ、性格診断サービスを提供している会社でインターンを始めました。
当時は時間がたくさんあったので、とにかく夢中で学び続けました。仕事以外の時間も含めると1日15時間近くコードを書いていた時期もあり、インターン期間だけで、たぶん2,000時間以上はプログラミングに取り組んでいたと思います。
インターン先の仲間と「こんなアプリを作ってみよう」と話し合いながら開発する時間が本当に楽しくて、「自分にはこの仕事が向いているのかもしれない」と実感するようになりました。
——就職の予定はあったのでしょうか?
インターン先から就職のお誘いもいただいていましたが、エンジニアの仕事に楽しさを見出しつつ、「これが本当に自分のやりたいことなのかな」という迷いもあったんです。
そこで、業務委託という形で働きながら、「25歳までは自分が本当にやりたいと思えることを探そう」と決めました。
——同世代が就職していく中で、不安や葛藤はありませんでしたか?
もちろん不安はありました。周りの友人が企業に入ってキャリアを積んでいる姿を見ると、「自分は何をやっているんだろう」と感じることもありました。
でも、自分が納得できる仕事に出会いたいという気持ちのほうが強かったんです。
その後は、スタートアップ支援の会社や人材系の企業などでインターンや業務委託として開発に関わり、少しずつ経験を積んでいきました。振り返ると、あの期間は自分自身と向き合う時間だったと思います。
進路に迷って思い起こした
「ナナメの関係」という原点
——業務委託として働きながら「やりたいこと」を探す中で、どのような業界を見ていましたか?
アルバイトの経験から「飲食×IT」領域に興味がありましたが、当時はまだその領域の企業が多くはありませんでした。そこで、「建築×IT」など、これからITで大きく変わりそうな業界へ視野を広げていきました。
カジュアル面談や面接は50社ほど受けたと思います。とにかくいろいろな人の話を聞いてみたかった。ただ、当時はまだ経験が浅く、働きたいと思える会社があっても即戦力が求められていたりして、なかなかタイミングが合わないことも多かったですね。
——その中で、教育やNPOという分野に目が向いた理由は?
人材業界で開発に関わっていたとき、多くの人が「これまでの経験」を基準に仕事を選んでいることに気づいたんです。本当は「やってみたいこと」で選んでもいいはずなのに、「今できること」の延長で考えてしまう。
その理由を掘り下げるうちに、「子どもの頃にどんな経験をしてきたか」が選択に大きく影響しているんじゃないかと思うようになりました。
大人になってからアプローチするより、子どもの頃に多様な人や価値観に触れることのほうが大切なんじゃないかと考えるようになったんです。そう思って調べていく中でカタリバに出会い、「ナナメの関係」に共感を覚えました。
——何かご自身の体験と重なる部分があったのでしょうか。
小中学時代、野球のクラブチームに入っていたのですが、そこでは保護者の方々が自分の子ども以外の子にも本気で向き合ってくれていました。
ヒットを打てば一緒に喜び、悪いことをすれば本気で叱ってくれる。親以外にも見守ってくれる大人がいる環境は、恵まれていたと今になって感じます。
高校から始めたヒップホップダンスでも、小学生からお年寄り、海外の方まで集まる環境でした。うまく踊れなくても誰も笑ったりすることなく、少しでもできるようになるとみんなでほめ合う空気がありました。
年齢や立場に関係なく、フラットにつながれる雰囲気がすごく心地よかったんです。
学校や家庭だけでなく、いろいろな人と出会える環境があったことは、自分にとって大きかったと思います。そうした、親でも先生でもない“ナナメ”の立場で気にかけてくれる大人の存在を、カタリバでは『ナナメの関係』と呼んでいると知り、興味を感じました。
——応募して、カタリバのメンバーと話してみた印象はいかがでしたか?
特定の職種を決めずに応募できる「オープンポジション」という枠で応募したのですが、面談で「システムチームが合っていると思う」と提案していただきました。50社近く見てきたからこそ感じたのですが、カタリバの方々は採用のためというより、1人の人間として向き合ってくれている安心感がありました。
お話ししたスタッフもすごくフラットで、野球やダンスを通じて心地よいと感じてきた人との関わり方と自然につながって、「こういう人たちがいる組織なら面白いだろう」と思いました。
「困ったら岩本さんへ」
と思ってもらえる存在を目指して
——現在のシステムチームでの業務と、仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
ワークフローシステムの運用やネットワーク、デバイスの管理などを担当しています。入職前はWeb開発が中心でインフラ系の業務は初めてでしたが、プログラミングを独学で身につけた経験があったので、「やれば何とかなる」という感覚でした。できるかどうかより、まずやってみようと。
仕事をしている中で一番大切にしているのは、技術以上に「相手を知ること」です。「ログインできません」という一文の問い合わせでも、「普段どんな仕事をしているのか」「いま忙しい時期なのかな」と背景を想像しながら対応しています。
システムを支えるというより、人を理解することが結果的に良いサポートにつながる気がしています。
——今年4月に岩手県大槌町で山林火災が発生した際には、急きょ開設した子どもたちの居場所にインターネット環境などの手配をされたとか。
現地から相談を受け、関係部署と連携して手配したのですが、後から「迅速で助かった」と言っていただけてうれしかったです。
実はその少し前に大槌を訪れ、「困ったら相談してください」と直接お話ししていたんです。顔を合わせていたからこそ、いざというときに迷わず連絡してもらえたのかなと感じています。
「困ったら、まず岩本さんに相談してみよう」と思ってもらえる存在でありたいと思っています。
——システムチームでは、生成AIの活用も進めていますね。
生成AIは、1回で完璧な答えを出してくれるものではありません。対話を重ねながら、自分が納得できる形に調整していく。その過程を面倒がらずに続けられるかどうかが一番大切なので、技術的なことよりも「どう向き合うか」というマインドを伝えるほうが難しいと感じています。
私自身もAIを日常的に使っており、単なる効率化ツールではなく、創造性を広げてくれる存在だと実感しています。
カタリバでも利用は広がっていますが、「使うこと」と「活用できていること」は別です。AIを前提に仕事の進め方そのものを見直していくことが、これからは大事になっていくと思います。
現場と並走し
組織をより良くしていくために
——システムチームのメンバーとして、今後の展望をお聞かせください。
チームでこれから目指したい姿を話し合ったときに出てきたのが、「現場との距離が近いシステムチームになりたい」ということでした。カタリバは全国に拠点があるため、スタッフ間の普段のやりとりはチャットやオンライン会議が多いんです。でも、問い合わせにリモートで対応するだけでなく、困っていたら「ちょっと行きますね」と気軽に足を運べる存在でありたい。
現場で拾った小さな困りごとを持ち帰り、組織全体の改善につなげていくのがカタリバらしさだと思っています。
——個人として関心のある領域や、取り組みたいことはありますか?
入職前はプログラミングそのものに夢中でしたが、最近は「作る」こと以上に、「組織がより良く動く仕組み」を考えることに面白さを感じます。
たとえば、システムにAIを組み込んで入力や承認をサポートしたり、申請の差し戻し率などのデータを分析して改善点を可視化したり。感覚や経験だけでなく、事実をもとに、より使いやすい仕組みをつくっていきたいです。
——これからのキャリアについては、どのように考えていますか?
正直、まだ答えを探している途中です。カタリバでは裁量が大きく幅広い経験ができる反面、「自分の専門性とは何か」と考えさせられることもあります。
ただ、約200人の職員と多くのスタッフが働くカタリバは、自分が取り組んだ改善が組織全体に届き、その反応も見えやすい絶妙な距離感があります。だからこそ、肩書きや職種にこだわるより、「組織をより良くする仕事」に挑戦し続けたいと思っています。
——最後に、カタリバや非営利セクターへの参画を考えている方へメッセージをお願いします。
自分の専門領域に向き合うだけでなく、人と関わりながら仕事を進める場面が多いので、コミュニケーションを楽しめる人にはとても合っている環境です。
そして、「今、組織に必要なことは何か」を考え、自分から仕事をつくっていく面白さもあります。正しい意見を主張すること以上に、日頃から信頼関係を築くことが大切になる。少しでも興味を持たれたなら、ぜひカタリバの扉を叩いてみてほしいですね。
モニターの設置からネットワーク対応まで、岩本はさまざまな部署や拠点へ足を運び、メンバーと顔を合わせながら仕事をしている。
取材を通して印象に残ったのは、「技術よりも、まず相手を知ること」という一貫した姿勢だった。
プログラミングに夢中だった学生時代を経て、今は「組織をより良く動かす仕組み」に向き合う。その積み重ねが、カタリバをより良くする仕組みを支えていくのだろう。
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佐々木 正孝 ライター
秋田県出身。児童マンガ誌などでライターとして活動を開始し、学年誌で取材、マンガ原作を手がける。2012年に編集プロダクションのキッズファクトリーを設立。サステナビリティ経営やネイチャーポジティブ、リジェネラティブについて取材・執筆を続けている。
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