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NPOカタリバ2019年を振り返る13のTOPICS

vol.122Report

date

category #活動レポート

writer 青柳 望美

2019年もたくさんの方々のご支援・ご協力のおかげで、10代に意欲と創造性を育むきっかけを届けることができました。本エントリーではそんなカタリバの2019年トピックスを、新しい取り組みを中心に振り返りたいと思います。

上半期(2019年1月〜6月)

1.今村が第10期中央教育審議会の委員に

NPOカタリバ代表理事の今村久美が、第10期中央教育審議会の委員に任命されました。任期は2年です。今村は、教育学の歴史や政策の変遷などを熟知された大学教授の方々や、各業界を代表する熟練した方々が任命されている中でお声がけいただいたことに感謝し、「私にお声がけをいただいたのは、公教育の中で生きる当事者である子どもたちに、学びが導く喜びや苦しみのリアリティある感性を想像できる立場から、あえて空気や慣例を読まずに発言していくことが求められているのではないかと理解しました。いまの現役世代が誰も経験したことがない、幸せに生きていくことの難易度さえ高くなることが予測されるこの先の未来社会の中で、20年後の子どもたちにどんな当たり前の学習環境を実現していたいか。おごらず、無駄にへりくだり過ぎず、課せられたお役目を全うしていきたいと考えています」と拝命にあたっての決意を話しています。

2.マイプロジェクトアワード2018の開催

全国高校生マイプロジェクトアワード2018『全国Summit』集合写真

2013年度に12プロジェクトの発表会から始まった全国高校生マイプロジェクトアワード。6回目となる2018年度大会には、全国およそ200高校から集まった562プロジェクト、2,713人がエントリー!19年3月に開催された、『全国Summit』には、なんと17.6倍の中から選びぬかれた32プロジェクトが東京に結集しました。
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3.新入職員21名がカタリバの新しい仲間に

4月2日に行った新入職員研修の集合写真

4月初旬に実施した「新入職員研修」には総勢21名の新入職員たちが集合しました。研修は「なぜカタリバに来ることを決めたのか」という1人ひとりの人生のストーリーを語り合うことからスタート。社会課題の解決を仕事にしたいと転職してきた人、不登校支援に情熱を注ぎたいと転職してきた人、探究的な学びを本気で究めたいと転職してきた人・・・誰もが知る大企業からの転職や元人気アパレルブランドのショップ店長など、多様なストーリーをもった新しい仲間を迎えることができました。

4.団体理念・コーポレートサイト・ロゴのリニューアル

リニューアル前のコーポレートサイト

活動範囲が広がった2016年ごろから始まった、私たちが実現したい社会=ビジョン、私たちの使命=ミッションの再定義。全職員が参加し何度も対話する中でカタチとなり、「Vision/どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会」「Mission/意欲と創造性をすべての10代へ」に決まりました。また全ての活動で共通する私たちの提供価値とは何か?を全員で熟議し、10代の意欲と創造性を育む5Stepが作成され、10代に伴走する技術と仕組みとしてコアコンピタンスに位置づけられました。職員の数が何人になっても大切にしたい行動指針も全職員で議論し、新しいクレドも作成しました。

こうして3年近くの時間をかけて完成したKataribaPhilosophyという新しい団体理念を表現する、コーポレートサイトとロゴのリニューアルが5月に完成しました。同時にこの記事を書いている『KataribaMagazine』もスタート!
*詳細記事はこちら

5.大槌高校魅力化プロジェクトのスタート

東日本大震災の後、コラボ・スクール大槌臨学舎の立ち上げから活動し、教育専門官として教育大綱づくりなど町の教育政策に関わっていたスタッフが中心となり、岩手県立大槌高校の魅力化プロジェクトがスタートしました。3名のスタッフが学校に常駐し、魅力化構想骨子案づくりや総合的な探究の時間のサポートを担うことになりました。
*岩手県日報に掲載された記事はこちら

6.ましき夢創塾の運営を熊本大学に移管

2016年4月に発災した熊本地震から今年で3年が経ちました。4年目も「コラボ・スクール ましき夢創塾」を続けなくてはという想いと、新たなフェイズに進まなくてはという現状認識の葛藤の中で、新たなモデルへと歩み始めました。新しくましき夢創塾の担い手に加わってくださったのは、益城町教育委員会と、熊本大学教育学部。立ち上げから3年間、NPOカタリバを支えてくださったパートナーです。NPOの機動力を活かして立ち上がったプロジェクトは、教育委員会と国立大学の持久力を活かした形へと引き継がれることになり、全国に類を見ない三者協定が結ばれました。
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7.全社会議2019の開催


カタリバでは活動拠点が複数地域にまたがった震災以降、毎年「全社会議」を開いています。あえてコストをかけて、対話そのものを目的に全職員が集まります。顔を合わせて互いの思いに耳を傾けあって語りあい、日常から離れて受ける新たなインプットを刺激に未来構想に思いを馳せる。1人でも多くの10代に可能性を届けるために、常に事業推進力を高めることを目指す私たちにとって、最も重要な機会の1つです。

2019年の全社会議のテーマは「UPDATE KATARiBA!」。安宅 和人さん(慶応義塾大学環境情報学部教授、ヤフー株式会社 チーフストラテジーオフィサー)と牧野 篤さん (東京大学大学院教育学研究科教授)にゲストスピーカーとしてお越しいただき、今の自分たちの仕事を疑う多角的視点をいただきながら、自分たちがつくりたい未来について考えました。
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下半期(2019年7月〜12月)

8.災害時子ども支援アライアンスsonaeru設立
民間パートナー第1号は株式会社ウィルグループ

日本国内の災害発生時に質の高い教育支援を一刻も早く届けるため、平時から自治体・企業・NPO等の間で災害時の連携内容についてアライアンスを組んでおくことで、迅速な支援活動を行う災害時子ども支援アライアンス「sonaeru」を設立しました。行政パートナーと民間パートナーをそれぞれ募集しており、民間パートナーの第1号として、人材サービスを主力とする株式会社ウィルグループとアライアンスを締結しました。

これまで私たちは、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨など、大きな災害が発生する度に、現地に駆けつけ、子どもたちの状況を把握し、企業や地元の学習塾、教育委員会や学校などと連携しながら、支援活動に取り組んできました。地元の方々からは必ずと言っていいほど「まさかうちが被災地になるとは・・」「日頃から備えていれば・・」といった声が聞かれます。日々、多くの災害が起こるにも関わらず、被災直後の教育現場の知見や経験は、なかなか他自治体には共有されません。いつ何時も、危機にさらされているということを念頭に置きながら、これまでの経験を生かし、即座に動ける体制をつくりたい。そして、「災害によって未来の希望が閉ざされる、そんな子どもを一人も生み出さない」という志を、現実のものとしていきたいと考えています。
*sonaeruについてはこちら

9.千葉県台風15号支援

台風15号の影響で甚大な被害を受けた、千葉県南部の館山市と鋸南町でヒアリング調査を行いました。カタリバの仕事のひとつである、自然災害後の被災地における教育支援の取り組みの一環です。児童養護施設、教育委員会、母親の方々、子供達が居場所に使う公共施設、学校などを訪問しヒアリングを実施。被災したご家庭や対象となる子どもたち、または学校の先生方など向けに、「被災した子どもたちはどんな支援や制度が使えるのか」という情報提供を行う活動を行いました。
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10.外国ルーツの高校生支援プロジェクトのスタート

長期的な人口の減少傾向や少子化、高齢化への流れが取りざたされる中、日本で働く外国人労働者の数は、ここ数年急速に増加しています。外国人労働者の増加に伴い、日本語教育が必要な子どもも年々増加しており、2016年度時点(平成28年度)で全国の公立小中高校等に約4万4千人、過去最多の数字となりました。「日本語がわからない」ことにより、勉強がわからない、友達とのコミュニケーションが取れないなど、社会からの孤立や不就学、不就労へつながっていく例も少なくありません。

カタリバは「違いが豊かさとなる未来」を目指して、2009年から外国ルーツの高校生の中退予防やキャリア支援に取り組んでき一般社団法人kuriyaと共同しながら、年々増える外国ルーツの高校生たちに、「適切な言語支援・学習支援」「孤独にならない居場所づくり」「キャリア支援」を包括的に行うことで、進学できずに非正規就職で経済的困窮状態に陥ることを防ぎ、むしろグローバル人材として活躍する未来をつくることを目指していきます。
*詳細記事はこちら

11.三重県及び全国学習塾協会と包括協定を締結

「災害時子ども支援アライアンスsonaeru」初の行政パートナーとなる三重県及び全国学習塾協会と災害時の子ども支援に取り組むことを目的とした連携と協力に関する包括協定を締結しました。災害発生時に円滑に関係機関が連携し早期に支援ができるよう、年に1〜2回協議の機会を設け、平常時から三重県、公益社団法人全国学習塾協会及び認定特定非営利活動法人カタリバの三者で協議を進めていきます。

災害発生時には、NPOカタリバは県から被害の大きい自治体の情報を受け支援活動に動き、全国学習塾協会は勉強を教える講師や場所の確保で協力、県は学習支援の場所を子どもたちや各学校に知らせたり、移動手段を確保するといった連携を行う予定です。
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12.台風19号の子ども支援

台風19号は広範囲に渡って甚大な被害をもたらしました。NPOカタリバは調査の結果、長野県長野市と宮城県丸森町で支援活動を実施。長野市では放課後や休日に子どもたちを預かる居場所スペース「コラボ・スクールながの」を開設。避難所で居場所がない子どもたちの遊び場となり、保護者が住宅の復旧作業に取り組むための預かり場所としても機能してきました。年明けからは現地の団体をサポートする体制で「コラボ・スクールながの」を続けます。丸森町では「週末コラボ・スクールまるもり」をスタート。他団体や教育委員会と協力し、週末に子どもたちを連れて自然の家に遊びに行く活動を行いました。
*詳細記事はこちら

13.マイプロジェクトアワード2019過去最大のエントリー数に

11月からエントリー受付を開始した、実践型探究学習に取り組んできた高校生の学びの祭典「全国高校生マイプロジェクトアワード2019」。12月15日に締め切りを迎え、エントリー数がなんと、『およそ2,900プロジェクト(昨年:562プロジェクト)/9,000人以上のマイプロジェクト実践高校生』となりました!12月の長野県大会を皮切りに、これから全国各地で地域Summitが開催されます。

2013年度にエントリー数12プロジェクトで始まったマイプロジェクトアワード。“1万人の高校生がマイプロジェクトに取り組んでいる未来を目指そう”と決めた時、まだ世の中では「探究」も「PBL」も話題になっていませんでした。小さなちいさな取り組みだったマイプロジェクトが、時代の流れの後押しも受けて、いよいよ過去最大規模・日本最大級の学びの祭典に。全国Summitは2020年3月開催です。今年はどんなストーリーが語られ、どんなドラマが生まれるのでしょうか…
*マイプロジェクトWebページはこちら
*全国高校生マイプロジェクトアワード2019プレスリリースはこちら

 

以上が、NPOカタリバ、2019年の大きなトピックスです。

もちろん上記の新たな取組みだけでなく、東北3県で取り組む「コラボ・スクール」の運営、中高生の秘密基地「文京区青少年プラザb-lab」の運営、困難を抱える中高生の安全基地「アダチベース」の運営、不登校支援を行う「おんせんキャンパス」の運営、島根県雲南市の教育魅力化プロジェクトの推進、島根県益田市の対話でまちを繋ぐ社会教育プロジェクトの推進、創業以来続く対話型キャリア学習プログラム「出張授業カタリ場」の運営を行ってきました。

全国の現場で、昨日より少しでも今日良くしよう、という日々の努力をし続けた1年でした。

来年に向けて

2020年。カタリバは創業20年目に入ります。

19年11月末、日本財団のサイトで「18歳意識調査」が発表されました。この調査は、日本をはじめとしたインド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツの17~19歳の若者各1,000人に対し、社会や国についての意識調査を行ったものを、日本財団がまとめたものです。他国との数値比較において、「自分の国の将来が良くなる」と答えた日本の若者は全体のたった9.6%。9カ国の中で最下位でした。また、他の設問では「自分で国や社会を変えられると思う」という問に対して、肯定できた若者は18.3%。韓国の39.6%の半分にも満たない結果でした。
*日本財団が公表した調査結果はこちら

子どもたちが希望をもって生きていけるような国になっていないという現実を、「意欲と創造性をすべての10代が育む未来」というミッション実現までの道のりを。私たちは重く受け止め、身を引き締めなければならないと感じています。

ますます増える自然災害、深刻さを増す子どもの貧困の課題、加速する少子高齢化。これからも、様々な困難や問題が、子どもたちの意欲と創造性を育むことを阻むかもしれません。大きすぎる課題を前に、何から取り組めばいいか分からなくなることもあるかもしれません。

それでも私たちは、2020年も引き続き、目の前の子どもたちのために、できることから全力で取り組み、走りながら考え続けていきたいと思っています。

2019年もご支援・ご協力をいただき本当にありがとうございました。
2020年も、どうかよろしくお願いいたします!

Writer

青柳 望美 パートナー

1983年生まれ。群馬県前橋市出身。大学時代は英語ができないバックパッカー。人材系企業数社で営業・営業企画・Webマーケティング・Webデザインを担当。非営利セクターで働いてみたいと考え2014年4月にカタリバに転職。全国高校生マイプロジェクトの全国展開・雲南市プロジェクト・アダチベースなどの立上げを担当。現在は新規プロジェクトの企画や団体のブランディングなどを担当。カタリバmagazine初代編集長、現在はパートナー。

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