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「地域とのコラボで持続可能な被災地支援を構築した3ヶ月間」台風19号支援長野県長野市での取り組みレポートvol.2

vol.128Report

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category #活動レポート

writer 長濱 彩

平時から災害時の備えを行うため、2019年9月にカタリバが設立した「災害時子ども支援アライアンスsonaeru」。設立後、提携した民間パートナーとの初めての活動となった令和元年台風19号支援で、これまでカタリバが培ってきた被災地支援ノウハウの活用や地域・行政との連携はどのようになされていったのでしょうか。台風被害の7日後には長野県長野市で子どもたちの居場所「コラボ・スクールながの」を開設、その後3ヶ月という短期間で地元団体が継続的に運営できるまでの仕組みを構築するに至りました。生活再建に奔走する保護者の声に耳を傾けながら、子どもたちの笑顔を取り戻すために取り組んだ、長野県長野市での活動レポートです。

■初動調査から1ヶ月間のレポートvol.1はこちら

被災から1ヶ月
運営をともに担う地元パートナーとの出会い

台風19号の被害から1ヶ月が経った11月初旬。長野県長野市では学校が再開し、スクールバスの運行や学童の職員増員など行政の支援体制が整い始めたことにより、親の送迎負担の軽減や、平日の子どもの居場所の確保ができ始めました。現地で居場所づくりを行なっていたカタリバスタッフは、緊急支援フェーズから復旧・復興フェーズに移行してきたことを感じ取りました。

そこで、カタリバは、今後を見据えた中長期の支援の検討を始めました。まずは保護者に向けたニーズ調査アンケートを実施。アンケートの結果、約7割が引き続き「コラボ・スクールながの」の開設を希望し、特に学校がない土日は生活再建のための手続きや作業などを行いたい保護者が多く、ニーズが高い状況にありました。保護者からは、「家の片付けが進まない。今後の当面の住まいや、長期的な住まいをどうするのかについて考えたり、工務店などと打ち合わせしたりする時間が必要。夫が単身赴任で週末しか打ち合わせができない事も多いため、今後も開催を希望します。」といった声も寄せられました。

アンケート結果を踏まえ、カタリバは12月末まで「コラボ・スクールながの」の継続開催を決定。同時に、中長期を見据えた持続可能な支援体制をつくることが求められました。地元のことをよく知り、ネットワークもある団体と運営の事務局を担うことができれば、子どもたちへのより安定した支援が可能となります。現場で運営の指揮をとるカタリバの職員、戸田は長野市の地元パートナーとして協働できる団体を探しました。

戸田:「10月末にもなると、長野市内にいくつか子ども支援をする団体が現れました。しかし、支援者の数は十分ではなく、災害時の子ども支援は初めてで、手探りでやってらっしゃる団体も多くありました。また、それぞれ目の前の支援で手一杯の中、連携、協力しあうことは容易ではありませんでした。そんな中、少しでもより良い子ども支援ができるようにと、周囲の支援状況を共有するために何度も『コラボ・スクールながの』に足を運んでくださる方がいました。それが、『長野市子どもにやさしいまちフォーラム』の方です。」

災害時子ども支援アライアンスsonaeruスタッフ 戸田 寛明 1991年生まれ。大学卒業後、アニメーション映画の制作に従事。スタジオジブリの「思い出のマーニー」などの作品に演出助手として参加したのち、2018年NPOカタリバに転職。「災害時子ども支援アライアンスsonaeru」として初めて民間パートナーと共に長野県の支援を担当。

長野市子どもにやさしいまちフォーラムさんは、市民が有志でつくる団体。平時は、子どもの権利条約を成立させることを目指し活動しています。発災後は、隣の須坂市において子どもの預かり支援を開始しましたが、活動場所の避難所が閉鎖されたことをきっかけに、カタリバに合流する形で恊働することになりました。

地元団体とコラボした新体制での運営スタート
子どもたちの笑顔が広がる

こうして2019年11月16日(土)より長野市子どもにやさしいまちフォーラムさんと共同での運営がスタートしました。

新体制で迎えた初の週末。縄跳びで走り回ったり、絵を描いたり、ダンスを披露しに来てくれたボランティアの方々に大はしゃぎの子どもたち。これまでと変わらず、笑顔がたえない2日間をつくることができました。

時を忘れ、スタッフや友達とのびのび体を動かす子どもたち

堤防が決壊したエリアでは未だ倒壊した家屋がそのままの姿を見せている12月。

引き続き多くの子どもたちが訪れる「コラボ・スクールながの」には、地元のボランティアの方々が、子どもたちに笑顔を届けようと手品の披露や動物とのふれあい、映画への招待や高校生企画のレクリエーションなど、多様なプログラムを企画。保護者からは「子どもたちのキラキラした目を見られて救われた」「子どもが行きたがる場所に預けられてありがたい」といった声が寄せられました。

手品に興味津々の子どもたち

生き物とふれ合う時間も

実際に子どもが体験できるプログラムを多く仕掛ける

台風19号によって日常生活が一変してしまった子どもたち。少しでも安心できる生活を目指し、保護者も学校も行政も生活再建・復興に向け必死に動いています。そんな中、保護者の負担を少しでも軽減するため、子どもたちの心の安定は欠かせないと戸田は言います。

戸田:体を動かせないことは子どもにとって大きなストレス。安心安全な環境で思う存分体を動かし、自由に遊んでもらうことが心の安定につながる。子どもの心が安定すると、保護者の心も安定していきます」

12月下旬、長野県はいよいよ寒くなってきました。今年最後の開設日を楽しく過ごすため、スタッフが地元の人たちと協力してクリスマス会を企画。事前に保護者の方々に「子どもたちが喜ぶプレゼント」のアンケートをとり、Amazonほしい物リストで支援を呼びかけたところ、個人や企業の方にご支援いただき、新品のおもちゃなどが入ったプレゼントが続々と集結しました。

クリスマス会に向けて続々と集まるプレゼントの山

12月22日(日)。年内最後となる「コラボ・スクールながの」には1歳から小学生まで51人の子どもたちが集まりました。ダンスなどのレクリエーションを楽しんだり、地域の洋菓子店の方が贈ってくださったケーキをみんなで食べたり、クリスマスソングを歌ったりプレゼントを受け取ったりするなど、いつも以上に笑顔に溢れた時間を過ごすことができました。

地元大学生によるダンスの披露

クリスマス会での食事やケーキにはしゃぐ子どもたち

プレゼントを選ぶ子どもたちの目は輝いていた

戸田:「開設当初から『コラボ・スクールながの』に参加していた子どもの親御さんからは、クリスマス会の帰り際、『本当に私が助けられました。辛かったことを、誰にも言えなかったんですけど、今日は子どもの笑顔を見て、涙が止まらないです』と声をかけていただきました。小さなお子さんを抱えて被災され、心細く不安な毎日を送っていた親御さんからいただいた言葉に、私たちも胸が熱くなりました。」

子どもたちのとびきりの笑顔が会場にあふれる中、2019年の「コラボ・スクールながの」の活動は幕を閉じました。

カタリバはバックアップする側に
受験生には学習支援で伴走

年が明けた、2020年1月。ここからはさらに1歩進んだ体制で子どもたちの支援をしていきます。これまでは長野市子どもにやさしいまちフォーラムさんとの共同運営でしたが、運営の主体をフォーラムさんに移行し、カタリバはバックアップ支援を続けていくことに。

また、カタリバは長野県NPOセンターと長野市教育委員会が開催・協力する、被災した中学3年生の学習支援の取組みに対して、学習支援のノウハウ提供と運営費のサポートを開始。

被災した中学3年生に向けて学習支援を開始

今回の台風19号の影響で、長野市内2校の中学校は校舎が被災したこともあり、休校が続きました。現在は7限目まで授業を行うことで勉強の遅れを取り戻そうとしていますが、被災した生徒に話を聞くと、「仮設住宅に移り住み、勉強する場所がない」「塾が被災して閉鎖されてしまい、放課後勉強を教わる相手がいない」など、受験生を中心に、学習の遅れに対する不安が大きくなっています。

学習支援の運営を担うのは長野県NPOセンターさん。ボランティアには信州大学や長野県立大学、地元の高専生や高校生が駆けつけてくれ、受験生に伴走。カタリバはこれまで培ってきた学習支援のノウハウと運営にかかる費用を長野県NPOセンターさんに提供します。地元の団体・人材とタッグを組み、3月の受験が終わるまでの新たな支援が始まりました。

地元の大学生や高専生らが学習に伴走

ここまでの支援体制構築まで現地で奮闘してきた戸田は、こう語ります。

戸田:「被災した子どもやその保護者は、発災直後から支援を必要としています。しかし、行政は構造上すぐに対応することが難しく、特に子どもの支援は後回しにされがちです。だからこそ、我々NPOという民間団体が即座に動く必要があると強く感じています。また、最近は被災地が報道されることも減ってきましたが、それは復旧復興が完了したからではありません。被災者の生活再建はこれからであり、どのようにして支援を継続していくかは常に課題です」

カタリバは地元団体や人材と適切な役割分担を模索しながら、台風19号で被災した子どもたちがその悲しみを乗り越え、自らの成長機会としてとらえ強く生きていけるよう、持続可能な支援を今後も続けていきます。

Writer

長濱 彩 編集担当

1988年生まれ。神奈川県横浜市出身。横浜国立大学卒業後、JICA青年海外協力隊でベナン共和国に赴任。理数科教師として2年間活動。帰国後、2014年4月カタリバに就職。岩手県大槌町のコラボ・スクールで数学を担当。小学部、適応指導教室の立ち上げにも携わる。第一子出産を機に島根県雲南市のおんせんキャンパスへ異動。不登校支援を行う。第二子出産と夫の転職を機に、沖縄県那覇市へ移住。2019年5月~復職し、在宅でカタリバmagazineの編集を行う。

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