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和田果樹(NPOカタリバ職員)× 今村久美 が語る。「見えにくい孤独」を抱える子どもを、支え続けていくために

vol.458Interview

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category #インタビュー

writer 編集部

子どもの"いまとこれから"会議 - Dialogue

2026年11月、カタリバは設立から25年を迎えます。 子どもや学校を取り巻く環境が大きく変化していく中で、私たち大人は、どのように子どもたちや教育と向き合っていくことができるのでしょうか。 いま教育に関わっている方々も、教育に関わっていない方々も、みんなで一緒に、子どもたちの「いま」をとらえ直し、「これから」について考えたい。 「子どもの"いまとこれから"会議 - Dialogue」では、カタリバの25年間の活動を通して見えてきたことや国の会議で議論されていることを踏まえながら、カタリバ代表理事今村久美と、様々な業界の第一線で活躍する方々が、教育と子どもたちの未来について対談します。

和田 果樹(わだ・みき)
1990年生まれ、兵庫県出身。大学院で教育心理学を学んだ後、新卒でNPOカタリバに入職。コラボ・スクール大槌臨学舎に配属となる。その後、実母が難病ALSを発症。地元に帰り半年ほど休職し、ケアラーとして介護をしながらリモートワークで働くことを選択した。現在「キッカケプログラム」でヤングケアラーの支援などを担当している。

今村 久美(いまむら・くみ)
NPOカタリバ代表理事。2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラムの提供を開始。ハタチ基金代表理事。地域・教育魅力化プラットフォーム理事。文部科学省中央教育審議会委員。東京大学経営協議会学外委員。

母の介護を通じて痛感した、支援に繋がることの難しさ

今村:ここ数年で、「ヤングケアラー」という言葉が社会的に知られるようになってきました。その一方で、子ども自身が支援先を見つけることや声を上げることが難しいため、当事者が必要な支援と繋がりづらいという現状があります。

カタリバでは、さまざまな事情を持つ家庭の子どもたちをオンラインで支援する「キッカケプログラム」という事業を行っていて、その中でヤングケアラーの子どもたちにもたくさん出会ってきました。

今回は、ヤングケアラー支援を担当しているスタッフの和田果樹さんにお話を伺っていきます。みきさんは、ご自身もご家族をケアした経験があるんですよね。そのことについて、教えていただけますか?

和田:私は2016年に新卒でカタリバに入職してすぐ、母が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかったことを知らされました。月1回ほど様子を見に地元に帰っていたのですが、少し前まで手でメールを打てていたのに足で打つようになっていたり、普通に歩けていたのに次に会うときには歩行器になっていたりと、1年半ほどの間にどんどん病状が進行してしまいました。

当時は私しか介護できる人がおらず、休職して地元へ戻りましたが、そのときに、自分は今まで何も考えずにいたんだなと思い知らされました。家族の介護の経験と、その時に感じた「支援につながることのむずかしさ」について話すカタリバ和田

今村:家族のケアをしないといけない方の状況のイメージが、湧いていなかった。

和田:全くなかったです。親は、ずっと元気なものだと思っていました。そして、そのときに痛感したのが、支援に頼ることが、こんなに大変なんだということです。

公的な支援は確かにあるんですが、どう繋がればいいのか、どう使えばいいのかが全く分からないところからのスタートだし、支援を利用できても、それで万事が解決するわけでもないという現実に直面しました。

この体験をきっかけとして色々調べているうちに、自分よりももっと若い子どもたちが、家族のケアを担っている現実を知りました。私は当時すでに社会人で、大人だから「助けてくれ」と声を上げられたけれど、子どもたちは生まれた時からその環境が当たり前で、助けを求めていいことすら気づけないかもしれない。いつかそんな子どもたちの力になりたいと思っていた時、カタリバでヤングケアラー支援の立ち上げの話が出て、真っ先に手を挙げました。

「あと1回学校を休んだら…」定期的に関わる中でみえた、ある高校生の本音

今村:みんな、自分の経験してきたことで家族の姿をイメージしてしまいがちですが、家族によっては全然状況が違うということがありますよね。「子どもの貧困」や「ヤングケアラー」という言葉を聞いても、全く想像できず、どこか遠い世界のことに感じてしまう人もいるかもしれません。実際、みきさんが担当しているオンライン支援事業「キッカケプログラム」では、具体的にどんな支援を届けているんですか?

和田:この事業では、さまざまな事情を抱えた家庭のお子さんたちにパソコンを届けて、「メンター」と呼ばれる大人たちとオンラインで定期的に対話の場を設けながら、子どもたちの進路や日常に少しでも「キッカケ」を届けることを目指しています。ポイントは、困った時に相談してもらうというよりは、定期的に顔を合わせてお話をすること。対話の中で関係性を築きながら、やりたいことや願い、困っていることなど、その子自身が自分のことを理解・表現していく力を育んでいくことを目的としています。

しかし活動を続けてきた中で、そもそも「カタリバがこういう取り組みをしている」という情報すら届かないご家庭もあり、支援が必要な家庭と繋がること自体が難しいということも見えてきました。

特に私が対面している「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちの場合、親御さんに障害があったり、スマホなどで情報収集できる状況になかったりと、このプログラムを続けるだけでは届かないという課題がありました。

そこで、自治体や地域で子どもたちを支援している方々に声をかけて、一緒に支援していくことになりました。地域側でも定期的な家庭訪問などはしているものの、話すのは保護者が中心で、普段何をしているか分からない子どもたちもいるとのこと。そのため、私たちがオンラインで定期的に接点を持ち、それぞれ役割分担をしながら一緒に支援をしていきましょう、と。

キッカケプログラムを通してヤングケアラーの支援に取り組む中で見えてきた課題や方向性について話すカタリバ和田

今村:行政と連携することで、困っているご家庭の存在を知ることができ、そして子どもたちを定期的にサポートしていけるということですよね。そんな中で、どのような子どもたちと向き合っているのでしょうか。

和田:たとえば、おじいちゃんの介護をしていた高校生のお子さんがいました。おじいちゃんのことが大好きで、前向きにやりがいを持って介護をしていたのですが、だんだん学校に行けない日が増えてきて、いよいよあと1回休んだら学校を辞めなきゃいけないかもしれないというタイミングまで来てしまっていたんです。

私とのオンライン面談(対話の場)に現れたその子は、画面越しでも分かるくらい顔が真っ青で、言葉も少ない状態でした。理由を聞くと、「あと1回休んだら学校を辞めなきゃいけないんです」と話してくれて、そこでようやく「それって、おじいちゃんの介護をしていて、しんどいことにも関係あるの?」と聞いてみたら、「それも関係あると思う」と、ギリギリまで追い詰められて、やっと話してくれたようなこともありました。

今村:経済的に困窮している家庭としてカタリバと繋がったけれど、その子に定期的に関わる中で、子どもの変化から「ヤングケアラー」としての側面も見えてきたということですね。

和田:そうですね。ヤングケアラーといっても、普通の高校生です。勉強や友達関係、部活の悩みもたくさんある。だからこそ、普段から介護のことばかりではなく、普通の高校生としての日常に耳を傾けていたからこそ、本当に大変なときに話してくれたのだと思います。

その後、カタリバの専門窓口を通じてお母さんともお話をしました。お母さんもシングルマザーで1日中働きながら、自分の親の介護と子育ての両方を担うダブルケアの状態で限界だったんです。ケアマネージャーさんからもっと外部の支援を頼ったほうがいいと言われても、「家族総出で頑張らなきゃ」と踏ん張っておられたんですが、カタリバからも「お子さんが今、学校を辞める瀬戸際まできています。来年は受験もあるから、もう少し周りに頼ってみませんか」と背中を押しました。

そこからショートステイの利用をスタートするなど、家族が「外部に頼ること」の大切さを実感していき、状況は少しずつよくなっていきました。その子は無事に学校に行けるようになり、今は大学生活を楽しんでいるようです。

今村:色々な環境で生きる子どもたちがいる中で、オンラインだからこそ、定期的に関わり、発見しづらい悩みや孤独に寄り添って応援していけるんですね。

ヤングケアラー当事者たちのリアルな状況を聞き、オンラインの支援についての可能性を語る今村

長期休暇中の食事支援 「おうち給食」をきっかけに、もう一度繋がり直す

今村:最近始まった新しい取り組みに「おうち給食」があります。これはどういったプロジェクトなのでしょうか。

和田:夏休み期間中に給食がなくなることで、ご家庭の負担が大きくなってしまうという現場の声から始まったプロジェクトで、子どもたちに冷凍のお弁当をお届けしています。

この取り組みにあたって事前アンケートを実施したのですが、夏休み中に子どもたちの食事を準備するため、保護者自身が食事の回数を減らしたという方が4割、お子さんの食べる量や回数を減らしているというご家庭も2割にのぼることが分かりました。この物価高の中で、日々の生活が本当に苦しいという声も届いています。

長期休暇に食事を届ける「おうち給食」の事前アンケートで見えてきた夏休み期間の家庭のリアルについて話すカタリバ和田

今村:実際に「おうち給食」を届けたのは、どんなご家庭だったか教えていただけますか?

和田:私の中で特に印象に残っているのが、お母さんと小学校高学年のお子さんの二人暮らしのご家庭です。お母さんが膝に不調を抱えている中で、ご自身のお父さんの認知症もひどくなってしまい、その介護を担いながら生活をされていました。

お子さんも食べ盛りの時期で、お母さんも「なんとかご飯だけは食べさせたい」と、自転車で2時間ぐらいかかる場所にあるフードパントリー(食料を無料で受け取れる支援の場)に、いつも食料を取りに行っていらっしゃいました。

しかし、そんな生活を続けているうちに元々悪かった膝が悪化して、自転車にも乗れなくなってしまい、「ご飯も食べちゃいけないなんて、私はもう生きていちゃいけないってことでしょうか??」とカタリバのメンターに泣きながらおっしゃったこともあったんですね。

そんな中で「おうち給食」が始まり、それまでお母さんも、しんどい状況の中で連絡が取りづらくなったり、お子さんもなかなかプログラムに参加できないような時期があったんですが、お弁当が届いてからは、「今、自分が求めているものが、カタリバから届いた」と喜んでもらえて、そこからまた連絡が取れるようになりました。食の支援が、関係性を繋ぎ直すことにも繋がったと実感できる経験でした。

今村:シングルマザーの方や、色々な事情を抱えているご家庭の保護者にとって、長期休暇中の子どもたちに毎日ご飯を作るというのは大変な負担です。

そういう方々こそ、連絡が取りづらくなってしまうこともある中で、「おうち給食」が信頼関係をもう一度作り直し、その方が本当に大変な時にまた連絡を取り合って応援を届けられる関係性になれる。これも、食事を届ける大きな意義だと思いました。これからも続けていきたいですね。

みきさん、今回は現場から見えるリアルな声を届けてくださりありがとうございました。

和田:ありがとうございました。

キッカケプログラムや「おうち給食」を通して見えてきた子どもたちや家庭のリアルや大切にしたい観点についての対談を終えたカタリバ今村と和田

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